マキシム・ピエール
在日フランス大使館文化部・フランス語担当官 (当時)
日本の皆様
コリブリ (日仏高等学校ネットワーク) は五年以上前から,日本とフランスの高校生交換留学を発展させ続けています。コリブリは完全双方向の交換という形が評価されているだけではなく,日仏の青少年たちがその国に滞在することによって,彼らが夢見た国を見出すための道具となります。これがコリブリの真髄なのです。
夢が現実のものとなる:青少年たちは教室で学習した言語を現実の世界で体験し,ホストファミリーでの生活,他の国の学校生活など,すべてが現実の体験となります。彼らは単に言語とその国に関してより深く知るだけではなく,まったく異なる文化のただなかで過ごすという重要な経験をするのです。大学進学など,自らの未来を決定づける選択をするこの大切な時期に,青少年たちは異なる文化に相対することにより,より自立し,より責任感を持ち,より心を開くこと,一言で言えば,より成長することを教えてくれる貴重な経験をすることになるのです。
それゆえに,在日フランス大使館文化部は新たな熱意を持って,このプログラムをしっかりと支え続けていこうと思います。また,コリブリ交換における担当の諸先生方,ご父母の皆さまの力を合わせたすばらしいエネルギーにも感謝致します。コリブリ・ネットワークが我々二つの文化に育まれる若者たちのより良き理解と両国間の交流発展のために,広き心と躍進力をもって成長し続けることを祈ります。
橘木 芳徳
初代日本側代表,暁星高等学校 (当時)
「コリブリ」の正式名称は「日仏高等学校ネットワーク」です。日本の学校でフランス語を学んでいる高校生と,フランス語圏の学校で日本語を学んでいる高校生同士の交換留学 (主として3週間の短期留学) を企画し,実行する組織です。参加する高校生の自己負担を可能なかぎり軽減すべく,加盟校の先生方がボランティアで活動しています。組織である以上,本ネットワークには管理運営上必要な規定を明確にするコリブリ憲章があります。さて,それでは設立経緯とその目的,また現在までの活動を簡単に紹介しましょう。
2002年暮れ,当時の仏大使館文化部の Jean-Noël JUTTET 氏の発案により,フランス語教育に携わる高校の先生方数名と大使館関係者との最初の予備会議が開かれ,日本の中学高等学校におけるフランス語教育発展のために,フランスの高校との交換留学制度を確立し,日仏ネットワークを設立していく方向で話がまとまりました。そしてその準備にとりかかることとなりました。
コリブリ (= COLIBRI) という名称は Collège (中学) と Lycée (高校) と,それに Bonnes Relations Internationales (良き国際関係) の音の語呂合わせから生まれました。ちなみに,この単語の本来の意味である「はちどり」は,小柄ながら極めて活発な小鳥です。
フランスの国民教育省,日本の文部科学省の理解と協力を得て,まずは可能性を探るため,2003年・2004年と学校長レベルでの双方の学校訪問並びに教育機関視察が行われました。この期間平行して準備委員会は,フランス語教育を行っている日本の高校,日本語教育を行っているフランスの高校を対象に,日仏交換留学制度に関心があるかどうか等,アンケート調査から始めました。これまで歴代の在日仏大使館文化部の言語教育担当官の Pierre KŒST, Jean-François ROCHARD, Maxime PIERRE 各氏も私たちと供に積極的にコリブリ活動に携わっています。現文化参事官 Alexis LAMEK 氏から資金面も含めた全面的支援を賜っていることは言うまでもありません。また APEF (= フランス語教育振興協会) からも協力や支援をいただいています。また,付言すべきは,本ネットワークは加盟校のコリブリ担当の先生方のボランティア精神による活動で運営されているということです。
日仏高校生交換留学に参加するためには,まずは所属校にコリブリへ加盟していただくことになります。加盟校になるための諸条件ももちろんあります。2015年度の加盟校は日本側が29校,フランス側が27校,ニューカレドニアが5校です。
3年間の準備期間を経て,コリブリの活動の一環として短期日仏高校生交換留学が実現したのは2006年度からで,第1回は27組の日仏パートナー,2回目は33組,3回目は40組となり,中期・長期の6組を含めますと,最初の3年間で実に日仏の高校生200名以上が参加したことになり,確実に規模が拡大しています。ただ,残念ながら,2009年度は新型インフルエンザの感染拡大を懸念するフランス国民教育省の勧告もあり,秋の受け入れは断念せざるを得ませんでしたが,勿論2010年春の日本人高校生の渡仏から再開いたしました。
日仏交流を促進発展させる活動の大きな柱として,このコリブリの日仏高校生交換留学制度を設立いたしましたが,その憲章には次の4つの目的を掲げています。
- 日仏両国の友好関係を深める。
- 日仏両国の教育的交流を促進する。
- 日本におけるフランス語教育,フランスにおける日本語教育を支援する。
- 多様化する異文化への理解を深めさせ,視野の広い人間を育成する。
すなわち,「英語圏文化以外の発見と異文化との直接体験を通して,来るべき多文化共生時代へ順応する青少年を育成する」という目標が根底にあるのです。
最後にコリブリが今後ますます発展し,多くの高校生が日仏交流,交換留学に参加してくれることを心より願っています。
ステファン・ラマック
初代フランス側代表
フランス大使館の文化部の人々,何人かの日本人のフランス語教師とフランス外務省から派遣されたグループとその一員としての私が東京で集まり昼食をしながら,日仏高等ネットワークを創立してからもう六年になります。それ以来,本ネットワークの交流交換に対しての興味が非常に高まり,フランス側の応募者の数が可能性を大きく上回っています。ネットワークのウェブサイトで日仏間の交流交換を見つけたフランス全国の高校生から日本へ行きたくてたまらないというメールが週に何回も届きます。
現在,フランスの多くの中学生と高校生がマンガを通じて日本文化を発見してショウネン,ショウジヨ,セイネンなどの日本語が中でも一般的に使われるようになったのです。日本以外に世界一番よく読まれている国はフランスだそうです。また,その愛読者のなかでアニメ,ドラマ,JポップとJロックの世界を探検する人もかなりいます。毎年,こういう世界を生きる高校一年生が高校でも日本語の勉強を始めていますが,私たち日本語教師は,彼らが既に幾つかの日本語も日本での日常生活も少し知っていることを見ると,とても驚くのです。それは,フランスから日本文化がとても遠ざかれていた時代と全く違います。
本ネットワークの交換を行なうことは,両国の責任者と先生方に結構重い負担です。しかし,日本に留学して,素晴らしい経験を充実して日本から戻ってきたフランス人高校生の話を聞くと,交換を続けるモチベーションが深まってきます。教室で外国語を教えるということも不自然だと思われますし,すごく離れた日本の文化を発見させることも大変複雑なのです。そのため,日本文化が身近に味わえるこの交換は,大きく助かります。
両国の先生方の協力が続いて,交換が発展していき,そしてテレビ会議などの他の手段もできるように祈っております。本ネットワークに参加してくださる先生方,両親と高校生の皆様にお礼を申し上げます。
(本人和訳)
対ニューカレドニア交換について NEW
- 歴史的経緯
2012年10月に聖ウルスラ学院英智高等学校(仙台)が第1回ニューカレドニア学区インターナショナル・サイエンス・フェスティヴァルに参加。生徒3名を引率した大槻が,その機会にDAREICのニューカレドニア担当者・M. Yves JACQUIER, Mme Anne GARREAU (Lycée LaPérouse教員) と会合。フランス本土との学年歴の差異から,対ニューカレドニア交換を独立させることを決定。それまではニューカレドニアからはLycée LaPérouse一校のみが,フランス本土交換と同じ交換時期で参加していた。ニューカレドニアの学年歴では,10月末~11月の3週間の日本滞在,帰国後11月末で学校が終了のため,日本滞在の成果を教員が確認できずに終わる。また,日本側受け入れが,翌学年度となる。以上の問題点があることから,日仏の受け入れが逆になるニューカレドニア独自のパターンの交換時期を設定。
- ニューカレドニア独自の交換パターン
日本側のニューカレドニア滞在 : 3月春休みを利用
ニューカレドニア側の日本滞在 : 5月末~6月中旬 (ニューカレドニアの秋休み) を利用
※ ニューカレドニアの夏休みは12月~2月,学年始めは2月第2週。これにより,日本側は受け入れが翌年度になるが,日本の学校の場合,生徒の他校への移動はない。
- Réseau Calédonien
2012年秋の会合後に設立。
参加校 : Lycée LaPérouse, Lycée Grand Nouméa, Lycée Jules Garnier, Lycée Blaise Pascal (私立)
- 今までの交換実績
- 第1回交換 (2012年度) : 2013年3月 + 6月 (6人・関東圏のみ)
- 第2回交換 (2013年度) : 2014年3月 + 6月 (7人・関東圏のみ)
- 第3回交換 (2014年度) : 2015年3月 + 6月 (6人・関西圏1名 + 関東圏5名)
- 第4回交換 (2015年度) : 2016年3月 + 6月 (15名,東北・関東圏9名 + 関西圏6名)
- 第5回交換 (2016年度) : 実施中 (17名,東北・信越・関東圏11名 + 関西圏6名)